特徴

偏光レオイメージングシステム Rheo-Iris
ソフトマターの物性データと構造変化を同時に測定可能
偏光レオイメージングシステム「Rheo-Iris」はアントンパール社製のレオメータ「MCRシリーズ*」と偏光ハイスピードカメラ「CRYSTA」を組み合わせた独自の測定システムです。
レオメータを用いた様々な物性データの測定と、偏光ハイスピードカメラを用いた構造変化の評価を同時に行なうことが可能であるため、様々な分野での新規材料開発や、用途に応じた材料の最適化に大きく貢献することができます。
*MCRはアントンパール社の登録商標です
複屈折測定
ソフトマターが持つ様々な物性(機能)は、材料内部の構造への刺激に応じて変化し、その形態は材料によって大きく異なります。どのような内部構造が形成されるのか、そして内部構造の変化はどのような条件でどのように生じるのか、これらを知ることでスピーディーかつ効率の良い材料の設計・開発が可能となります。
内部構造の変化と複屈折特性には関連性があるため、偏光ハイスピードカメラを使った複屈折測定は様々な分野での新規材料開発に極めて有効です。

以下のデータは、レオメータがCNF(セルロースナノファイバー)サンプルへ応力を与えた際に、内部の構造がどのように変化しているかを可視化・測定したものです。
構造変化の様子を偏光ハイスピードカメラで可視化することにより、応力の値によって形状の維持や流動性の向上といった機能が異なることが明確に確認できます。
二色性測定
二色性は光の振動面の方向によって光の減衰率が異なる現象です。材料内部で可視光が散乱する程度の大きな異方性構造を形成する場合、偏光状態が入射前と透過後で変化します。この場合、複屈折測定によるアルゴリズム(屈折率の違いによって生じた偏光状態の変化)を適用させてしまうと、その偏光状態の変化から正しい複屈折値を計測することは不可能です。光の散乱度合いの違い、すなわち光の減衰率の違いで生じた偏光状態の変化からは、二色性測定によるアルゴリズムによって得られる二色性の値およびその主軸方位によって材料の構造評価を行う必要があります。二色性計測も考慮することで、様々なソフトマターにおける偏光計測が可能になります。
以下のデータは、静置状態においてコレステリック相を形成し、流動を与えることでネマチック相に構造変化する液晶相溶液の二色性計測の事例です。一定せん断速度(10 s-1と100 s-1)によってサンプルに流動を与えた際の時間発展を捉えた結果が示されています。10 s-1の場合は、流動方向に平行なスレッド状テクスチャが形成されることがわかります。一方、高せん断速度の100 s-1では、テクスチャは消滅し概ね均一な二色性分布が得られました。
二次元二色性計測によってテクスチャ構造といったマクロ構造の構築や崩壊などの複雑な挙動を空間的かつ定量的に評価することが可能です。
10 s-1における動画
100 s-1における動画
反射測定オプション
高分子融液、液晶性材料など形成する構造が温度に依存するような材料を評価する場合は、精密な温度制御が必要です。その際には測定ステージをフードで覆う必要があるため、透過光を使った偏光撮影をすることができません。
この場合、カメラと同軸で測定光を照射可能な反射測定オプションが有効です。また、反射光を利用した計測の場合、流れ場全体を可視化することが可能です。


以下のデータは反射測定によって得られた界面活性剤水溶液の事例です。界面活性剤水溶液は、種類によって形成される構造の温度依存が大きいものもあります。本事例は20度に固定して得られたせん断粘度特性と内部構造の両者を評価しました。粘度が低下(shear-thinning現象)する辺りから複屈折が増加し始めます。また高い複屈折値を示す領域は、せん断速度の増加にともない流路中心部まで広がっていきます。
しかしながら、粘度が不連続的に変化する辺りで複屈折分布は不均一になります。すなわち、形成される構造が大きく変わることで粘度の不連続的な変化が生じたことがわかります。流動を停止させると複屈折は一度大きな値を示しますが、その後急激に低下しました。
このように反射測定オプションを利用することで高精度な温度コントロールのもと、流れ場全体を可視化することで、透過測定システムでは得られない構造情報を入手することができます。
一軸伸長試験オプション
一軸伸長試験は、試料を一方向に引き伸ばすと、そのときの応力とひずみの関係を測定することで、材料の伸長特性を評価する試験方法です。ソフトマターの加工や成形の際にはせん断流動だけでは説明できない現象が多く存在し、その際は伸長流動の特性を理解することが重要となります。
偏光ハイスピードカメラは、材料内部の「応力」や「分子配向」を動的に測定できるため、高分子材料の配向状態、伸長試験中の局所的な応力集中、液滴の伸長・分裂流動と分子配向の関係などの評価に最適です。
右のデータは界面活性剤水溶液を測定した結果です。材料が伸長流動するに伴い位相差が大きな値を示しますが、伸長流動を停止した後は緩和挙動によって位相差が低下していく様子を捉えています。

